口ゴボの原因と治し方(矯正)
このページの内容について概略を示します・
1.口ゴボとは?
口ゴボの概要
(Eライン、鼻唇角、人中、ほうれい線)
2.口ゴボの原因
先天的要因
後天的要因
3.口ゴボの治療法
美容外科領域からのアプローチ
(セットバック)
歯科医学的アプローチ
(矯正治療、外科矯正)
3.口ゴボの矯正
口ゴボのタイプとその治療例
4.口ゴボのQ&A
口ゴボとは?
口元が傍目から見て突出している(見える)状態を指し示します。
矯正では、「上下顎前突」とも表現します。
口ゴボの概要
その人の骨格やお鼻の高さ、オトガイ部の成長具合など、様々な要因により、お顔のバランスは変わります。 結果として「口元が出てる!」の捉え方もいろいろです。 そのため、口ゴボと評価する基準に絶対的なものはありませんが、私たちが判断基準としているものとして二つあります。
まず、主となるものは、Eライン( Esthetic line )でしょう。
口元(口唇部およびその周囲)がEラインよりも外側に出ていると、「口元が出てる!」「口ゴボだ!」と感じると思います。
もう一つは、鼻唇角です。
この鼻唇角が小さいと、口唇部がピュッと飛び出てるように感じると思います。
それに付随して、人中やほうれい線のことを気にされる方も多いようですね。
Eライン(エステティックライン)
口元の美の基準としてよく知られるものに、エステティックライン(Eline)があります。
下顎の先(オトガイ部)と鼻の頭のてっぺんを結んでできる線のことです。
上の写真のように日本人の場合、このE-lineに対して、
「下唇はぎりぎり接するぐらい、上唇は接することなく余裕があるぐらい」
が理想的であろうとされています。
鼻唇角
「鼻唇角」とは、お顔を横から見たときに、「鼻の付け根から鼻の先端までの線」と「鼻の付け根から上唇に延長させた線」の交わる角度です。
日本人の場合、この角度が90°~100°の範囲が平均的といわれています。
一般にこの角度が小さく急であるほど、唇がピュッと出て見えます。 角度が大きくて開いているほど、口元がスッキリと見えます。
人中
「人中」とは、鼻の直下から上唇まで縦に伸びる溝状の部分です。 日本人の場合、平均的な長さは1.5cmと言われています。
矯正治療によりその絶対的な長さが変わることはありません。 しかし、上の前歯を引っ込めることで鼻唇角が大きくなると、正面から見た場合の相対的な長さは理論的には長くなります。
ほうれい線
「ほうれい線」(鼻唇溝)とは、お顔の頬と口元の境界線のことで、お顔や頬の皮膚のたるみにより生じると考えられています。
ですから、加齢などに伴い皮膚の張りが減少して弛んでくると、だんだん目立ってきます。
口ゴボの人の場合、元々、お口周りに不必要な緊張があり、口を閉じるときに「力」が入って下顎の先(オトガイ部)に大なり小なり梅干し状のシワが入ることが普通です。 お顔の皮膚に過度な緊張がありますから、弛みが生じ難いと言えるのかもしれません。
口ゴボの原因は?
口ゴボを引き起こしている一番の原因は、顎に対して歯列が本来より前方に位置しているからであると考えます。 その結果、歯の根元の歯茎(歯根部)辺りが口唇を内側から外へ押し出して、口元が前に出てしまうのです。 いわゆる歯(白い歯冠部)の影響は小さいと思います。 実際、出っ歯の人が前歯をセラミックにして内側に倒しても、口元はほとんど変化しません。
鏡を見ながら自分のお口を触ってみてください。 口元が盛り上がっているのが白い歯の部分ではなく、歯茎の部分から盛り上がっていることが分かると思います。 そのせいなのか、個人的意見ですが、ガミースマイルを併発している場合にはガミースマイルも治した方が、口元の変化は大きいような気がしています。
また、口ゴボの状態を矯正では「上下顎前突」と表しますが、実際に骨格的に顎の成長自体が良すぎて口元が出ている・・・というのはあまり見ることがありません。
口ゴボの先天的要因
もちろん、骨格的に上下の顎の成長が良すぎるというケースはあると思います。
しかし、ほとんどは、顎の成長は普通なのだけれど歯列自体が前方に位置した結果、口ゴボに見えてしまうというパターンです。
そして、東洋人によくみられる下顎特にオトガイ部の劣成長(いわゆる顎が無い)が加わると、口ゴボがより強調されてしまいます。、
また、前歯が外に傾いているほど鼻唇角も小さくなり、口元(特に口唇辺り)が突出して見えます。
当然ですが、お鼻の高さが低くて・・・ということもあると思います。
口ゴボの後天的要因
口呼吸は、上下顎の骨を外側から内側に挟むように働き、前歯を前方へ押し出すようにしてしまうので、いわゆる出っ歯を生じやすくなります。
口ゴボの治療法
大きく二つの治療法があります。
まず一つは、美容外科領域からのアプローチです。 そしてもう一つは、歯科医学的なアプローチです。
美容外科的アプローチ
いわゆる「セットバック」ですね。
抜歯をして、それより前方にある歯列を後方へ移動させて引っ込める手術法です。 必要なら前歯をセラミックの歯に変えて、並びなども変えてしまいます。
短期間で効果が見込めるし、良いですよね。 欠点は、骨切りを上手くやってないと術後、歯茎にクレバスのような裂け目が生じたり、奥歯に隙間が出来たりすることがあります。
歯科医学的アプローチ
歯科矯正(ワイヤー矯正)
口ゴボを引き起こしている一番の原因は、顎に対して歯列が本来より前方に位置していることです。 そこで、途中の奥歯を抜歯して、口唇や口元を内側から押し出している前歯と歯茎(中に歯根がある)を奥へ出来るだけたくさん引っ込めていこう!という矯正治療です。
アンカースクリューを使うことで、抜歯スペースをより有効に前歯を引っ込めることに使うことが出来ます。
抜歯を伴うワイヤー矯正も、抜歯した歯のスペース分を引っ込めますので、セットバックと同等の変化をさせることが出来ます。
ワイヤー矯正の利点としては、噛み合わせも良くなるのは当然ですが、(ケースを選べば)場合によってはアンカースクリューを追加して使うことで、抜歯スペース&プラスアルファ―奥へ引っ込めることが出来る、ということでしょう。 欠点は、どうしても時間がかかることでしょうか。
外科矯正
自由にやって良いのならば、一番確実に思うがままに治せるのではと思います。 ただし、大きな問題が立ち塞がります。 それは、はたして口ゴボは医学的な病気だろうか?という壁です。
外科矯正というのは、例えば、受け口や開口、顔の歪みなどで、抜歯して矯正しても普通の噛み合わせにすることが出来ない時などに、顎の骨を切って根本から治してしまおう!という考えのもと保険適応にて施術されています。 「歯のレベルの矯正治療だけでは良い歯並びと良い噛み合わせを達成することが出来ない症例に対して、外科手術を併用することで骨格レベルから治してしまおう」のが本来の目的なのです。
口ゴボの矯正
口ゴボのタイプ
相談でよく見られる「口ゴボ」をいくつかのタイプに分けしてみました。 もちろん実際には、ここで示したタイプの複合型になることが多いのですが。。。
顎の成長に問題は無く、口唇辺りが前に出ているタイプ
→よくあるタイプの口ゴボの治療の詳細は、コチラを参照してください。
顎の成長に問題は無く、オトガイ部から下唇が前に出ているタイプ
→オトガイ部から下唇が前に出ているタイプの口ゴボの治療の詳細は、コチラを参照してください。
顎の成長に問題は無く、下顔面部全体がモワッと出ているタイプ
→下顔面部全体がモワッと出ているタイプの口ゴボの治療の詳細は、コチラを参照してください。
下顎の成長(特にオトガイ部)が悪く、口ゴボでいわゆる顎が無いタイプ
→下顎の成長(特にオトガイ部)が悪く、口ゴボでいわゆる顎が無いタイプの口ゴボの治療の詳細は、コチラを参照してください。
出っ歯で口ゴボになっているタイプ
→出っ歯に伴うタイプの口ゴボの治療の詳細は、コチラを参照してください。
口ゴボとガミースマイルを併発しているタイプ
→口ゴボとガミースマイルを併発しているタイプの口ゴボの治療の詳細は、コチラを参照してください。
口ゴボのQ&A
どのくらい引っ込むのですか?
正直、人様々です。
引っ込めるスペースは抜歯した分ですが、昔の研究によると「歯が『10』引っ込んだら口唇は『3』引っ込む」という報告があります。 でも実際に治療に携わっていると、そんな数字では収まらないような口元の変化をよく経験します。
皆さん、唇の厚みやどのくらい緊張して口唇部が前に出ているのかも違えば、骨格も違います。 いろいろな条件が組み合わさって変化しているはずです。 一概にコレだけ引っ込む、とは答えられないというのが、私の見解です。
具体的な答えが出来ず、スイマセン。
引っ込み過ぎて老け顔になったり、しゃくれたりしませんか?
そんな心配するくらい引っ込めば御の字です、と言いたいところですが、前にも記したように口ゴボの絶対的な基準はありません。 ある意味、とても主観的なものと言えるでしょう。 ですから、ある人で引っ込んで口元がスッキリした時に、それを素晴らしい!と評価する人もいれば、引っ込み足りない・・・、引っ込み過ぎた・・・、と様々な評価があるかもしれません。
今、当院で「口ゴボ」を矯正するときには、「もうこのくらいの引っ込み具合で良いかな!?」と感じたら、早めに教えてください、と話しています。 加減して引っ込み足りなかったら困るので、まずは一所懸命引っ込めるよう努めますが、「このくらいで十分かな」となれば、その時点からは残るスペースの閉じ方を前歯と奥歯の両方が動いて無くすようにして、引っ込み過ぎたと感じないようにしています。
あと、いわゆる唇の薄い人は口元が引っ込んだ時に、老けて見られやすくなるのでは?という話もあります。
また、受け口気味の骨格でオトガイ部がしっかりある方の場合、抜歯をしてスキ間があるからと言って考えなしに前歯を引っこめてしまうと、「しゃくれた感じ!」になってしまいます。(日本人的には、「しゃくれた感じ!」は受けが悪いですから・・・)
そのような骨格を持っている人では、より慎重に矯正後の顔貌のイメージを話し合う必要があります。
人中が長くなったりしませんか?
矯正治療によりその絶対的な長さが変わることはありません。 しかし、上の前歯を引っ込めることで鼻唇角が大きくなると、正面から見た場合の相対的な長さは理論的には長くなります。
ただ、今までの経験上、「口ゴボは治ったけど、人中が長くなったことが新しい悩みです」なんて言われてことは一度もありません。 相対的には人中が長くなりますが、それを補って余りある変化が口元に起きています。
人中のことを言われたという患者さんの経験はありませんが、「鼻が高くなったね!」「鼻を整形した?」と言われたという患者さんは結構たくさん経験しています。
ほうれい線が深くなったりしませんか?
矯正治療により口元の緊張が軽減されることにより、本来あるべき姿に戻ることはあっても、弛んでしまうほど変化することはないと思います。
頬骨という山、口元という山、その境目がほうれい線という谷間です。 頬骨は変わりませんが、口元という山は低くなりますから、ほうれい線という谷は浅くなる方向に変化するのでは!?と考えています。
すくなくとも、ほうれい線が深くなって新しい悩みが出来た・・・ということを言われたことはありません。
出っ歯だから口ゴボなんですか?
実は、「出っ歯」にも二種類あるのです。
日本人に多いのは、「Ⅱ級1類」という上の前歯が外へ開いて出ているタイプです。 一方、「Ⅱ級2類」という噛み合わせは出っ歯なんだけど、上唇の力で上の前歯が内側に押されてしまい割と真っ直ぐになっているタイプです。
「Ⅱ級1類」の方の場合は口元が出ている人が多い気がします。 そして、「Ⅱ級2類」の人の場合は口元は特に問題ないことが多いような印象を持っています。
歯並びは良いのだけれど口ゴボなんです、矯正しても良いの?
歯並びとその歯並びが頭蓋骨の中でどういう位置にあり、結果としてお顔がどう見えるかは別モノです。
きれいな歯並びと良い噛み合わせであるなら、口呼吸しやすいなどの問題を除けば、歯科医学的には問題無いと言えるかもしれません。
しかし、WHOが定義する健康には、肉体的な健康と精神的な健康に二種類があります。
個人的な見解ですが、歯科医学的に問題無くても、抜歯して矯正することで心の悩み・コンプレックスが解消されて、より前向きに過ごして行けるようになるならば、治療した方が良いと考えます。 悩むぐらいだったら、進んで治しましょう。