受け口(反対咬合)の原因と治療法【受け口について詳しく解説】

     【目次】
1.受け口(反対咬合)とは?

2.受け口(反対咬合)の原因

3.受け口(反対咬合)の治し方
     子供の時期の矯正
     大人の場合の矯正
       ワイヤー矯正 / 外科矯正 / マウスピース矯正
4.受け口(反対咬合)のQ&A
     ・子供の受け口を治すとき、注意することは?
     ・子供にやる気がありません。どうしたら良いでしょうか?
     ・受け口の中学生で、既に永久歯列です。抜歯して矯正を始めても良いですか?
     ・抜歯を伴う矯正をすると、下の前歯が内側に倒れた感じになってしまうと聞きましたが、本当ですか?
     ・受け口の子供の治療を大人になるまで待って、一気に治しても良いですか?
     ・受け口を治したら、出ている下顎は引っ込みますか?

受け口(反対咬合)とは?

受け口反対咬合)とは、上の前歯が下の前歯より後ろに位置し、上下の前歯が噛み合わない状態を指します。

受け口(反対咬合)でよくある噛み合わせ

特に骨格的要素が強く出ている場合、下顎前突という言い方をすることもあります。 その場合、見た目的にいわゆる「しゃくれた」ような顔貌(横顔)になることが多いです。

下顎前突(反対咬合)の典型的な横顔

通常、上の前歯が下の前歯の外側にかかるのが正常な噛み合わせですが、受け口では逆に下の前歯が上の前歯を覆うようになります。 この状態は、見た目の問題だけでなく、噛み合わせに関わる健康問題も引き起こす可能性があります。

受け口(反対咬合)の原因

受け口が発生する原因はさまざまで、遺伝的要素や環境的要因が影響しています。

遺伝的要因として、骨格性の下顎前突があります。
見た目としていわゆる「しゃくれた」ような顔貌を取ることも多いです。 便宜上、下顎前突と言っていますが、下顎の過成長に問題がある場合と、上顎の劣成長に問題がある場合とがあります。

また、血縁者に受け口の方がいる場合、その子供にも同じ症状が受け継がれることはよく見られます。 しかし、血縁者には受け口の人がいないのに、子供さんに受け口の症状がみられることも、これまたよくあります。 いずれにせよ、ご両親から受け継がれた因子により構成されているわけですから、広い意味では遺伝と言っても良いでしょう。

環境的要因とは、歯槽性の反対咬合を引き起こす原因と言い換えても良いかと思います。
具体的には、子供時代の指しゃぶりや不適切な舌の使い方が長期間続くこと、早期の乳歯喪失が永久歯の萌出に悪影響を与えてしまうこと、などが挙げられます。

受け口(反対咬合)の治し方

受け口の矯正治療は、患者さんの年齢や症状に応じて様々な方法があります。以下は代表的な治療法です。

子供の時期の矯正

子供の受け口の場合、早期に矯正治療を始めることが推奨されます。
何故かというと、早めに始めた方が、「よりシンプルに治すことが出来て」、「より格好良い顔貌の治療結果を得ることが出来る」可能性が高いからです。

年齢や骨格の成長の度合い、受け口の程度(症状の具合)、歯列の具合(乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期)などを総合的に加味して、使う装置や時期を決定します。

よく使われる矯正装置としては、FKOなどの床矯正装置、マウスピース型の矯正装置などの可撤式の装置。 リンガルアーチのような固定式の装置など、比較的簡便なモノがあります。 これらは比較的症状が軽い場合に用いられます。

もっと骨格的要素が強い場合であれば、顎外固定装置を用います。
上顎の劣成長が目立つ場合は、上顎前方牽引装置など上顎の成長を促進することで治そうとする装置です。
下顎の過成長が目立つ場合は、チンキャップなど下顎の成長を抑制することで治そうとする装置です。

大人の場合の矯正

1. 歯列矯正(ワイヤー矯正)

歯列矯正は、ブラケットや治療用ワイヤーを使って歯を動かし、適切な位置に整える方法です。
多くの場合で抜歯を伴うことが多いですね。

受け口(反対咬合)におけるマルチブラケットによる矯正治療

いわゆる矯正で治すことが可能か否かを簡便に判断する方法として、構成咬合を取ることが出来るかどうか!?というものがあります。 上と下の前歯の先端同しで噛むことが出来れば、矯正治療が可能であると判断するものです。

2. 顎外科矯正

顎の骨格自体に問題がある場合、歯列矯正だけでは改善が難しいことがあります。 いわゆる顎変形症といわれるものです。
その場合、顎矯正手術(外科手術)が必要になることがあります。
まず術前矯正を行い、次いで顎矯正手術を行い、最後に術後矯正を行い仕上げます。 一般に入院期間が一か月間程度になります。

3. マウスピース矯正

マウスピース矯正(インビザラインなど)は、透明なマウスピースを使って歯を徐々に動かす方法です。
軽度の受け口の場合、マウスピース矯正で改善が期待できることがあります。 治療中の見た目も気にならず、患者の側の日常生活における負担が少ないため人気があります。

受け口(反対咬合)のQ&A

子供の受け口を治すとき、注意することは?

子供の受け口の治療は、一般的に1度治したらそれで終わりではありません。
原因が歯槽性のものであれば、その時に1度治せば終わり、ということもあります。
しかし、原因が骨格性の場合、治療はとても長いスパンで行われ、最終的な治療が終わるのはイメージ的には二十頃と思ってください。
何故かと言うと、一度治しても、下顎の成長に伴い再発することがよくあるからです。

子供の受け口治療のよくあるタイムスケジュールを示しましょう。
 就学前~小学校期      可撤式の矯正装置
 小学校高学年期~中学校期  顎外固定装置を用いた顎の成長のコントロール
 高校期           ワイヤー矯正(必要なら抜歯を伴う)
 成人以降          顎矯正手術
これはあくまでも一つの例ですが、その年齢(成長の具合)と症状により、治療法を選択していきます。
ですから、目先の治療や結果に一喜一憂しないようにしてください。

子供にやる気がありません。どうしたら良いでしょうか?

治療に用いる矯正装置はお子さん自身による使用(=協力)が必要なモノがほとんどです。
お子さんにやる気が無い場合、親御さんは子供のためにと思い「装置を使いなさい!」と一日中叱っていなければならなくなり、大変です。
 わたくし個人の意見としては、自分と周りの友達を比較するようになり、「治したい!」という認識を持つまで待つのも作戦かなと。。。 年齢や成長の時期により多彩な治療法があります。 その時に治さないともう治らない、、、などというものではありません。 上にも記しましたが、目先の治療や結果に一喜一憂しないようにしてください。

受け口の中学生で、既に永久歯列です。抜歯して矯正を始めても良いですか?

待ってください!
永久歯列ではあっても、体の成長が止まっていない場合、下顎の成長により抜歯して矯正しても治らなかったり、直ぐに再発したりする危険があります。
抜歯を伴う矯正は、必ず体(というか顎)の成長が終わったことをしっかりと確認してから行ってください。

手足の骨、すなわち長管骨という骨が大きくなることで身長は伸び体は大きくなっています。 下顎骨も見た目の形はちょっと異なりますが、同じ長管骨なのです。 一般的に、身長が伸びていると同じか、ちょっと遅くにズレて下顎の成長も起きるということが分かっています。 また、厄介なことに下顎の場合、晩期成長というものが起きて、二十頃までじわじわと成長が続くこともあるのです。

抜歯を伴う矯正をすると、下の前歯が内側に倒れた感じになってしまうと聞きましたが、本当ですか?

元々受け口の方の歯並びにおいては、(特に骨格性要因が強い場合)下の前歯は内側にやや倒れ気味になることで少しでも前歯の噛み合わせのズレを小さくしようという体の効果が働いていることが多いです。
その上、下の前歯の部分の骨の厚みは薄いことが多いため、抜歯により歯体移動ではなく、傾斜移動となることが多いのです。 結果として内側に倒れ気味になってしまうわけです。

受け口を治して、下の前歯が内側に倒れた感じになった様子

受け口の子供の治療を大人になるまで待って、一気に治しても良いですか?

お子さんが小さい時から、地道に矯正治療を受けさせてあげることをお勧めします。
理由が二つあります。

まず、小さい時から顎の成長のコントロールを含む治療を受けた方が、「よりシンプルに治すことが出来て」、「より格好良い顔貌の治療結果を得ることが出来る」ことが多いからです。

そしてもう一つの理由は、お子さんの心の問題です。
(あくまでも個人の感想ですので、それを踏まえてお読みください。)
思春期になり同じ受け口の症状を持っていても、これまでずっと何某かの治療を受けてきたお子さんは表情を含め明るいことが多いように感じています。 一方、それまで放置されていた子供さんでは、親御さんとの会話があまり無かったり含め、何か暗いように感じるケースを経験することありました。
たんなる偶然かもしれません。 でも、、、とも思うのです。

受け口を治したら、出ている下顎は引っ込みますか?

受け口(反対咬合)の方が矯正治療を考えるとき、必ず押さえて欲しいことがあります。
それは、「歯並びが治れば十分なのか」。 それとも、歯並びが治り、「出ている下顎が引っ込まないといけないのか」という点です。

受け口の方で骨格性要因が強くみられる場合、いわゆるしゃくれた感じで、下顎の存在感がどうしても目立つ方もおられます。 こういう時、いくら歯並びが治っても、出ている下顎という骨格の部分は全く変化はありません。

受け口が治っても、骨格的にしゃくれた感じの残る横顔

このような骨格に起因する要素の改善も狙う場合は、外科手術の併用をしないと満足する結果は得られません。
下手に抜歯矯正をしようものなら、気にしているしゃくれ感がひどくなる危険もあります。
歯科の先生とよく相談してください。