歯列矯正と金属アレルギー

金属アレルギーなんだけど、矯正できるの?

金属アレルギーをお持ちの方は、矯正治療に不安を感じることもあるでしょう。
金属アレルギーがあっても、歯列矯正は可能です。
本記事では、金属アレルギーの概要、歯列矯正における影響、そしてよくある質問について詳しく解説します。

     【目次】

1.金属アレルギーの基礎知識
   金属アレルギーの概要
   金属アレルギーの仕組みと症状
   金属アレルギーの予防(対策)と検査

2.歯列矯正と金属アレルギー   
   ワイヤー矯正
   マウスピース矯正

3.金属アレルギーでよくある質問
    Q1. 夏場、 汗をかいた場所が赤くなったりして、
      金属アレルギーと思うけど、銀歯が入っています。 矯正できますか?
   Q2.医療用ステンレスのアクセサリーなら大丈夫なんですが、矯正できますか?
   Q3. 金属アレルギーの検査はどこでしてもらえるのですか?
   Q4. 矯正治療中にアレルギー反応が出てしまったら、どうすれば良いですか?

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金属アレルギーの基礎知識

金属アレルギーの概要

金属アレルギーは、特定の金属(主にニッケル、コバルト、クロムなど)に対する過敏反応によって引き起こされるアレルギー症状です。
いわゆる「かぶれ」で、遅発型アレルギー(Ⅳ型)になります。

金属アレルギーの仕組みと症状

金属アレルギーは金属が皮膚や粘膜に触れることで、免疫システムがその金属を「異物」として認識して、過剰に反応することから始まります。
金属アレルギーは遅発型のアレルギー反応であるため、原因物質に触れても直ぐには反応しません。 初期反応は数日後に現れ、以下の症状が一般的です。

主な症状として次のようなものが知られています。
・かゆみ
・赤み
・発疹
・水ぶくれ
・皮膚の乾燥やひび割れ

これらの症状は、原因となる金属が直接皮膚に触れた部分に現れることが多いですが、体全体に広がることもあります。

金属アレルギーの予防(対策)と検査

金属アレルギーを持っている場合、以下の対策が有効です。
① ニッケルを含むアクセサリーや衣類の金具を避ける
② 金属製の器具や金属成分を含む化粧品に注意する
③ アレルギー反応が出た場合は、医師に相談して、適切な治療を受ける

金属アレルギーは個人差が大きく、同じ金属であってもその人によって反応が異なるため、自分のアレルギーの原因を知ることが大事です。

疑いがあり、原因を明確にするならば、皮膚科でのアレルギー検査(パッチテスト)を受けることをお勧めします。
また、金属アレルギー検査(パッチテスト)においては、背中に原因となるアレルゲンを貼り様子を確認します。 通常、2日目、4日目、7日目と複数回の来院が必要で、その間は入浴が制限されたりします。
費用は、保険適応となると思われますので、ケースバイケースですが、約1万円程度のことが多いようです。

歯列矯正と金属アレルギー

従来のワイヤー矯正では、金属製のブラケットやワイヤーを使用しますが、金属アレルギーを持つ方にはリスクがあります。 近年では、ニッケル含有量を抑えた製品もあります。
しかし、アレルギーはその量ではなく、含まれているか含まれていないのか、いわゆる「0か1か」なので、根本的にはアレルギーを起こす金属が含まれていないブラケットやチューブ、ワイヤーが望まれます。
そのために、セラミックであったり、アレルギーを起こしにくい金属であるチタンを素材とした各種製品が治療には用いられます。

*「チタン」は生体親和性が非常に良く、アレルギーをほとんど起こさないため、人工歯根(インプラント)にも用いられています。
アレルギーを絶対に起こさない物質というのは無いみたいで、化学的安定性がとても高い「金」ですらアレルギーを起こしたという報告があるようです。

また、マウスピース矯正であれば、そもそも金属アレルギーの心配をする必要がありません。

ワイヤー矯正の場合

金属アレルギーが原因で通常の金属製の矯正装置などが使えない場合は、セラミック製のブラケット、チタン製のチューブやワイヤーを用いて治療することになります。

チタン製のチューブやセラミック製のブラケット
左側はチタン製のチューブ、右側はセラミック製のブラケット、になります
各種チタン製のワイヤー
各種のチタン製のワイヤー

その上で、必ず次のステップを踏んで、安全安心を確認したうえで治療を進めます。

 step1.   (通常目立たない下顎に)非抜歯のまま使用予定の装置やワイヤーをセット

 step2.   一か月間以上、様子を観察

 step2.5  もしもアレルギーを疑うような体調変化があれば
     必ず連絡をいただき装置などを除去するとともに、必要なら皮膚科を受診していただく

 step3.   一か月以上様子を見て特に問題なければ、抜歯を含め本来の治療の流れに入る

また、チタン製のワイヤーを用いた場合、販売されている製品の種類やワイヤー自体の特性のため、通常と比べるとワイヤーの選択肢が限られてしまいます。
(ブラケットは、セラミック製を用いるためアレルギーの心配はありません。)

そのため、次のようなデメリットが生じることがあります。
1.ワイヤーにループと呼ばれる変な形をしたモノを曲げて組み込む必要が出てくる。
2.ワイヤーの強度の問題で、治療の仕上がりに限界がある恐れがある。
3.白いワイヤーを選べない。
当院の場合、4社の製品を使い分けています。

実際の矯正治療では、金属アレルギーだからと言って歯の動きに違いがあるわけではありません。
ただし、チタン製のワイヤーしか選択できないので、通常のワイヤー矯正で行う治療初期のステップで形状記憶合金が使えなかったり、ストレートワイヤテクニックが使えない場面などもあるので、古典的なループメカニクスを用いた技術が必要だったりします。

マウスピース矯正の場合

マウスピース矯正であれば、その素材はいわゆる樹脂になりますので、金属アレルギーの心配をする必要がありません。

ただし、注意が二点あります。
1.適応症があります。
  ワイヤー矯正と全く同等のことが出来るわけではありません。
  歯科医師の先生とよく相談してください。
2.指示を守らないと十分に治りません。
  患者自身がマウスピースを毎日20~22時間装着することが求められます。 適切な使用がされない
  と、治療期間が延びたり、十分に治らないこともあります。

金属アレルギーでよくある質問

Q1. 夏場、 汗をかいた場所が赤くなったりして、金属アレルギーと思うけど、銀歯が入っています。 矯正できますか?
Q2.医療用ステンレスのアクセサリーなら大丈夫なんですが、矯正できますか?

A. アレルギー検査を行い、問題がなければもちろん矯正治療が可能です。
しかし、既にお口の中に銀歯が入っているけど特にアレルギーを疑わせる症状が無い。 医療用ステンレスのアクセサリーならば大丈夫。
などという場合には、簡易的に次のようなステップを踏んでいます。

step1.   (通常目立たない下顎に)非抜歯のまま使用予定の装置やワイヤーをセット

step2.   一か月間以上、様子を観察

step2.5  もしもアレルギーを疑うような体調変化があれば
     必ず連絡をいただき装置などを除去するとともに、必要なら皮膚科を受診していただく

step3.   一か月以上様子を見て特に問題なければ、抜歯を含め(安心して)本来の治療の流れに入る

上記のステップを踏んで問題無ければ、通常の歯列矯正が可能なことが普通です。
ただし、治療中にやはり金属アレルギーでは?という状況になるようであれば、チタン製の製品に換えて治療を続行する、ということは言うまでもありません。

金属アレルギーの検査はどこでしてもらえるのですか?

主に皮膚科で行っています。
ただ、この検査のためのセットはどの皮膚科にもあるわけではありませんので、事前に電話で確認した方が良いです。
また、大学病院など大きな病院の歯科口腔外科でも行っている所があります。

矯正治療中にアレルギー反応が出てしまったら、どうすれば良いですか?

もし矯正治療中にアレルギー反応が疑われる症状が出た場合は、すぐに歯科医師に相談しましょう。
装置の変更や治療方法の見直しが必要です。