矯正しようかどうか悩んでいる大人へ

小さい時から悩んで時間だけが過ぎてしまった方、大人になって急に意識しだして悩んでいる方、歯並びは気になるけど、もういい大人だしと諦めかけている方、
・・・どうしようかな・・・と悩んでいる方も多いと思います。
多くの大人の患者さんを診てきた私が思う答えの一つを示しましょう。

     【目次】
1.今さら矯正?という躊躇

2.矯正治療中の見た目について気になるあなたへ

3.大人特有の問題もあります
   ・大人でも歯は動くのかな?
   ・大人の矯正はすごく痛いと聞くけど大丈夫?
   ・歯周病は大丈夫?
   ・以前、顎関節症と言われたけど大丈夫?
   ・お口の中に銀歯や差し歯がいっぱいあるけど大丈夫?

今さら矯正?という躊躇

『 矯正するなんて大げさなと思っていたけど、治療を終えて一番思うことは、
悩んでいた期間、コンプレックスとして抱えていた時間が、ものすごくもったいなかったという気持ちです。』
そんなことを言われたことがあります。 
矯正をするのか否か!?
正直、めぐり合わせだと思っていますが、治せる悩みを抱えて時が過ぎるぐらいなら、「思い立ったが吉日」ではないでしょうか。
あとは、そのことに気づき、チャレンジする勇気を持つだけです。

縁あって、当クリニックで矯正された大人の方たちの言葉を記しておきます。

😀『 写真を撮る時、歯を見せない(出さない)ようにして写るのが当たり前になっていました。
でも、いつか結婚式を挙げたときに、笑顔の少ない写真ばっかり残るのは嫌だ
「人生で一度の結婚式!  思い切り笑顔で迎えよう」と決心しました。 』

😁『 30歳を前にもういい加減悩むのはやめようと思いました
これから仕事に加え、結婚、子育てを30代で経験するかもしれない。 少しでも時間が取れる今のうちに解決しておこう、と考えました。 』

🙂『 矯正のことはずっと気になっていたのですが、なかなか最初の一歩が踏み出せずにいました。
そんなある日、友人と歯並びの話をしていた時に、「気になるんだったらした方が良い。 今がその時期なんじゃない?」と言われ、32歳にして一歩を踏み出す決心ができました。 』

😊『 最初、家族や友人からは「いまさら矯正?」と口を揃えて言われました。
そうです! わたしは46歳!! 二人の息子は大学生!!! 確かに今更かもしれません。
でも、今、矯正に踏み出さなかったら、一生この歯並びと付き合っていかなければいけない。 死んで火葬されても歯は残る。 孫に見られるかも(いれば)・・・
このままでは、きっと後悔する! 後悔したくない! と思ったのです。 』

ご自身の心を見つめ直し、チャレンジするきっかけになれば幸いです。

矯正治療中の見た目について気になるあなたへ

矯正治療を始めるとき、「治療中の見た目が気になる」と感じるのは当然のことです。 特に大人の場合、仕事や人間関係、日常生活での見た目に対する意識が高いこともあるでしょう。
しかし、矯正治療は一時的なものです。 そして、治療が終わった後には、より健康的で美しい歯並びを手に入れることができます。

治療中の見た目に不安を感じる気持ちはよく理解できますが、治療を終えたときの「美しい歯並び」や「より引き締まった口元」、「健康的な口腔環境」を考えると、今は少しの辛抱だと思います。
矯正はあなたの未来のために大きな投資となります。

とは言っても、治療中の見た目が気になる方にとって、いくつかの選択肢や心構えがありますので、ご紹介します。

  1. 見えにくい矯正方法
    最近では、従来の目立つ金属のブラケットや銀色のワイヤーだけでなく、白いブラケットや白いワイヤーを用いる目立ちにくい装置もあります。
    また、透明なマウスピース型の矯正装置(例えば、インビザライン)を用いる治療法もあります。
    これらの方法なら、治療中も気づかれにくく、周囲の人に気を使わずに進めることができます。
  2. 少しの間の辛抱
    矯正治療中の見た目は、最初は気になるかもしれませんが、治療を始めることで「自分の未来の笑顔」がより美しくなると考えると、前向きに取り組めるかもしれません。
    治療が終わった後、あなたの笑顔はきっと今よりも自信に満ちたものになります。
  3. 矯正が与える印象
    実は、矯正治療をしていること自体が、周囲に「自分の健康や美しさを大切にしている」という印象を与えることがあります。
    自己改善に取り組む姿勢が、逆にポジティブに映ることも多いので、見た目を心配するよりも、その前向きな姿勢を大切にしましょう
  4. 長い目で見た価値
    矯正治療は、見た目だけでなく、口腔内の健康にも大きな効果があります。
    歯並びを整えることで、噛み合わせや歯周病、顎関節への負担を軽減でき、長期的には口腔の健康維持にもつながります。 見た目の変化が一時的である一方で、治療後の健康や自信に満ちた笑顔は長い間続くものです。

大人特有の問題もあります

それは、「大人の歯も動くのかな?」「大人の矯正はすごく痛いと聞くけど大丈夫?」「歯周病とか大丈夫?」「以前、顎関節症と言われたけど大丈夫?」「お口の中に銀歯や差し歯がいっぱいあるけど大丈夫?」という数々の心配です。

大人でも歯は動くのかな?

「力」を加えることで歯が動く反応は、ごく一般的な体の反応であり、年齢に依存した特殊な反応ではありません。
もちろん、子供と比べると骨の中の骨髄の量の減少をはじめとした骨質の変化もありますから、若い子ほどスムーズではないこともあるでしょう。
そのため多少時間を要することもあるでしょうが、大人、40代であっても50代であっても、問題なく歯は動きます

大人の矯正はすごく痛いと聞くけど大丈夫?

「自分が小学生でもこれなら大丈夫!」という痛みまでを頑張ってください
間違っても、「痛いけど大人だから痛み止めを服用して頑張ります」などという無理(!)を頑張ってはいけません。

矯正中の痛みというのは、歯が動く反応の中で産まれますので、止むを得ないモノではあります。 しかし、痛いから歯が動くとか、痛い分だけ歯が動く、というわけではありません。
でも皆さん、実際に矯正治療が始まると、「痛いと矯正してる気がして安心する」「痛いほど、歯がよく動いてくれそうで頑張れる」なんて方が多いのです。

では強すぎる痛みというのは、いったい何が起きているのでしょう?

実は強すぎる痛みというのは、強すぎる「力」の結果なので、歯の周囲の毛細血管が潰れてしまい、歯が動くという反応が上手く進まずに逆に歯の動きが悪くなります。 それどころか、痛みなど体へのダメージだけは大きくなってしまい、トラブルが増えてしまうのです。

歯周病は大丈夫?

歯周病に罹患した状態で歯列矯正を行うと何が悪いのでしょうか?
実は歯周病の炎症が強い状態で矯正力のような(ある意味余計な)外力が加わると、その部分の歯を支える骨が溶けてしまうのです! 咬合性外傷という現象です。

矯正治療中は、歯の周りで骨が溶けたり出来たりという反応を常に繰り返して歯が動いています。 歯周病の炎症が強い状態で矯正をすると、歯を支える骨(歯槽骨)が不必要に溶けてしまい、歯周病が進行してしまうのです。
そのため、矯正前にチェックして歯周病があれば、きちんと治しておくことが大事になります。

原則として矯正装置を付ける前に、必ず歯周病&虫歯のチェックをしてもらいます。

その際に、お口のクリーニングをすることで、細菌数が処置前の約1/100~1/1000に減少して、お口の中がより清潔に、そしてリスクが減るからです。 矯正装置が付くことで歯磨きし難いお口の中であっても、細菌が少なければお口の中で歯周炎や虫歯などの悪さを起こすリスクが減らせます。
合わせて、装置を付けて矯正治療が始まった後に、必ず「装置を付けたけど歯磨きできている?」という歯磨きの確認とクリーニングを行います。 

以前、顎関節症と言われたけど大丈夫?

顎関節症の症状としては、顎の痛み、口を開けづらい、音が鳴るなどがあります。
今の時点で、顎が痛いとか口を開けづらいなどの症状がある場合は、矯正治療前に顎関節症の治療を行うことは当たり前です。 しかし、音が鳴るだけという状態は、要経過観察であり、それだけでは治療対象になりません。 なぜなら、既に顎関節部の周囲組織に変形などが生じて体が適応してしまっていると考えられているからです。

いずれにせよ、顎関節に不安を抱える場合は、口腔外科の先生に診ていただき、現状特に問題が無いことを確認したうえで、矯正治療を始めることになります。

ただ、そういう方の場合、(ある意味)顎関節部が弱いわけですから、稀に矯正治療中に症状が一時的に増悪することがあります。 その時は必要に応じて口腔外科の先生に診ていただき必要な処置を受けてもらいます。

現在の研究では、矯正の既往と顎関節症の発症とは直接の関係が無いということが分かっています。

顎関節症は複合原因により発症すると考えられていて、「噛み合わせ」は顎関節症の多くの原因の一つに過ぎないと考えられているからです。

分かりやすく言うと、ココに大きなコップがあり水が入っています。 この水が様々な発症に関与する原因で、大きなコップがその人の許容度です。 そして日常の生活を送る中でコップに水が追加されていき、コップから水が溢れた時が顎関節症の発症した時!となるわけです。

歯並びが悪いなど噛み合わせが悪いことは、顎関節症の原因の一つであることは間違いありません。 矯正治療は、発症しにくくなるよう環境を整備するという大きな意味があるのです。

お口の中に銀歯や差し歯がいっぱいあるけど大丈夫?

全く問題なく矯正が可能です!
歯が動く反応は、歯の根っこ(歯根)の所で起きますので、銀歯や差し歯は関係ありません。

ちょっと問題があるとすれば、以下の二つでしょう。
 1.装置を付けづらいことがある
 2.変則的な抜歯をすることがある

患者さんにとっての不利益を出来るだけ避けるために治療プランを色々と考慮しますが、限界はあることを分かってください。

  1. 装置を付けづらいことがある
    銀歯や差し歯といった修復物の大きさや材質によっては、そのままではブラケットなど装置を付けることが出来ないことがあります。 そういう時、装置を付ける部分に絞って修復物に穴を開け、虫歯治療に用いる白いプラスティックを詰めてから、装置を付けるということを行います。
    そのため、矯正治療が終わった後に差し歯などをやり換える必要が生じることがあります。 このことは、セラミックの歯がある人で特に悩むことでしょう。
  2. 変則的な抜歯をすることがある
    矯正のために抜歯する歯は決まっているわけではありませんが、多くの場合で「普通この歯を抜いて矯正を進めるよ!」という一般的なやり方があります。 それ以外の歯を抜くと矯正が出来なくなるわけではありませんが、普通ではないやり方をするということは、やはり余計なトラブルなどのリスクを抱えやすくなるのも事実です

    銀歯や差し歯がある場合、この歯を抜きたいと思っても、明らかにダメージが大きく予後不良な歯があれば、その歯を抜かざるを得ません。 また、矯正をするためには抜歯が必要だが、既に以前の虫歯治療で歯を抜いている箇所があり、結果、トータルとして普通よりも抜歯本数が増えることもあります。