ガミースマイルを治して、口元を引っ込めたい
患者さんは、20代前半の女性(社会人)です。
「笑うと見える歯茎のガミースマイルが衝撃!だったので、治して、出ている口元も引っ込めたい!」
笑うと歯茎(歯肉)が大きく見えて悪目立ちして歯の存在感がとても大きいのが嫌! 口を閉じるときにいつも「力」が入ってシワができるし、口元が出ていることも気になるので引っ込めてスッキリさせたい、という希望でした。
【Before】
レントゲン写真で確認すると、
この患者さんの場合、
【診断】
「上顎歯列咬合平面が下方へ位置し過ぎていることによるガミースマイル」
「歯列の前方位による上下顎前突(2級傾向)」
「左最奥のシザースバイト」 と診断しました。
【治療方針】
1.延長パラタルバーにてシザースバイトの改善
2.次いで、アンカースクリューを用いて上顎歯列全体を圧下させてガミースマイルの改善 (下顎歯列にも装置を付けて、下顎の反時計回りの回転を狙う) 3.抜歯をして、上下の前歯を最大限に後方へ移動 (上顎の奥歯にはアンカースクリュー2本を補強として併用)
という治療計画にて、矯正を進めることにしました。
【抜歯】
上下の左右の奥歯を1本ずつ計4本抜歯 (上顎の埋伏した智歯は早期に抜歯)
【治療装置】
上顎に延長パラタルバー 上顎にアンカースクリューを計4本(前歯に2本、奥歯に2本)を使用。
マルチブラケットシステム(ハーフホワイトtype)で矯正を開始。
【経過1】 まずは、邪魔になる上の埋伏している智歯を抜歯しました。 最初のステップとして、左上奥の外へズレている奥歯を本来の歯列に戻すことが目標です。
お口の中の写真を撮り忘れてしまったのでレントゲン写真で表示しますが、黄色と赤い線で囲んだ白い線が延長パラタルバーになります。(赤い線で囲んだ部分がシザースバイトを治すための部分です)
シザースバイトの改善と並行して、上の歯列を圧下するために、先行して上だけ歯の表側に「白いブラケット&白いワイヤー」を付けて、いわゆる普通の矯正治療も始めています。
【半年経過】 シザースバイトが改善しました。
【経過】 次いで、ガミースマイルを治すために上顎の前歯辺りと口蓋の真ん中にアンカースクリューを各2本ずつ、計4本植立しました。 (奥歯の圧下を考えると、本当は上の奥歯の頬側にも追加したかったのですが、歯根間のスペースが狭くて出来ませんでした。)
落ち着いたところで、口蓋に植立したアンカースクリューに「PLAS」、上の奥歯の内側に「パラタルバー」を付けて、前歯部分のアンカースクリューと合わせて、上の歯列全体を圧下させていきます。 下の歯にも「白いブラケット&銀色のワイヤー」を付けて、下顎の反時計回りの回転を狙います。
【1年経過】 ガミースマイルの改善がなされたので、次のステップ、前歯を引っ込めて口元をスッキリさせるという段階に入ることにしました。 まずは上の奥歯(4番目)を抜歯して、上の前歯を後方へ引っ込めて行きます。 (この時点で、上の内側に付けていたPLASとパラタルバーは除去しています)
【経過】 次いで、下の奥歯(4番目)も抜歯して、同じく前歯を後方へ引っ込めて行きました。
【約2年経過】 上下とも抜歯スペース分は前歯を後方へ引っ込めたのですが、残る問題が二つ。 一つは、前歯の噛みこみが深くなり、ガミースマイルがちょっと再発してしまった。 二つ目は、元々の噛み合わせが出っ歯気味ということもあり、以前として出っ歯の嚙み合わせが改善されていない。 そこで、前歯のアンカースクリューを用いて上の前歯だけ再び圧下させる、とともに、口蓋のアンカースクリューを利用して上の歯列全体をプラスアルファ―更に後方へ引っ込めることにしました。
【途中経過】 その後、噛み合わせをよりしっかり確立させるために、約4か月間に渡り顎間ゴムを頑張ってもらいました。 含めて細かい仕上げを行いました。
【After】
矯正後の状態をレントゲン写真で確認すると、
【保定】 上下ともフィックスタイプ&クリアリテーナー
【治療期間】 3年3ヵ月間
【治療費用】 88万1千円
【治療装置】ハーフホワイトtypeのマルチブラケットシステム
アンカースクリューを計4本、PLASを2種類、パラタルバー×1
今回、ガミースマイルの再発であったり、上の歯列をプラスアルファ―後方へ引っ込めるステップが追加されたりなどあり、余計に時間を食ってしまいました。 それでも、笑った時の口元の雰囲気はガラリと変わり、満足してもらえたようで何よりでした。
参考までに矯正治療前後の「レントゲン写真」と「笑顔の口元の写真」を比較してみましょう。 見て一目瞭然に違いが分かると思います。