ガミースマイルの治し方【矯正】

「ガミースマイルって治せるの?」
「どうやったら、ガミースマイルを治せるのか知りたい!」


笑ったり話したりするときに、前歯とともに大きく見える歯ぐきは結構目立つものです。 「入れ歯みたい・・・」と気になって悩んでいるという方も多いと思います。

この歯ぐきが悪目立ちする見た目(ガミースマイル)は、治すことが出来ます。

しかし、ただ歯肉を切れば治るとか、抜歯して矯正すれば治るとか、などではありません。

今回は、ガミースマイルの原因などとともに、歯科的(ワイヤー矯正)治療法、美容外科的治療法をまとめました。 合わせて、実際の治療例をお見せして、Q&Aにお答えしています
「ガミースマイルを治したい!」と悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。

     【目次】
1.ガミースマイルって何?
    ガミースマイルの概要
2.ガミースマイルの原因
    ガミースマイルの原因
3.ガミースマイルの治療法
    歯科医学的アプローチ
      (矯正治療、歯肉切除、外科矯正)
    美容外科領域からのアプローチ
      (ボトックス注射、口腔前庭縮小術)
4.ガミースマイルの矯正治療例
    case1. 口ゴボを伴うケース1(前歯の噛み込みが深いタイプ)
    case2. 口ゴボを伴うケース2(前歯の噛み込みが浅いタイプ)
    case3. 非抜歯で治療したケース
    case4. 八重歯と出っ歯を伴うケース
    case5. 口ゴボを伴うケース3
    case6. 口ゴボを伴うケース4
5.ガミースマイルのQ&A
    Q1. 出ている前歯を引っ込めるだけでも治せますか?
    Q2. マウスピース矯正でも治せますか?
    Q3. 圧下すると歯がめり込んでいきませんか?
    Q4. 上の前歯が下唇に食い込んでいるのは良くなりますか?
    Q5. 歯ぐきを見せずに笑うことは出来ますか?

ガミースマイルって何?

ガミースマイルとは、何でしょう?
それは、笑った時に前歯と一緒に歯ぐき(歯肉)が大きく見えてしまっている状態のことです。

笑うと歯茎がガッツリ見えるガミースマイル
笑うと歯ぐきがガッツリ見えるガミースマイル

ガミースマイルの概要

一般的に、笑った時に見える歯ぐきの幅が3mm以上の場合を、ガミースマイルと呼んでいます。
( 3mm以下であっても、自分が気になるならそれはガミースマイルです)
決して病気ではないのですが、出っ歯やごぼ口などを伴っていることが多いので、笑うと、前歯と歯ぐきが一緒になってドーンと前に突き出したような感じに見えてしまい、口元や歯の存在感がとても大きくなってしまうことが多いようです。
そのため人によっては、「笑った時に前歯と歯ぐきが一緒に見える」状態がとても目立つので、嫌だし気になってしまう方もおられます。 その場合が治療対象になると考えます。
また、ガミースマイルの歯ぐきの見え具合は、10年で1mm見えなくなるという研究もあるようです。

ガミースマイルの有名人

女優さんで言えば、沢口靖子さん、戸田恵梨香さん、新垣結衣さん、柴田理恵さん、久本雅美さん、などなど。
スポーツ選手で言えば、錦織圭さん、安藤美姫さん、上原浩治さん、 などなど。
結構多くの人がいます。

ガミースマイルの原因

ガミースマイルの原因は二つあると考えています。
一つは、上口唇を含む周囲の表情筋が上方へ動き過ぎ(上がり過ぎ)ること
もう一つは、上の前歯(または歯列全体)が本来よりも下方に位置していること
この二つの組み合わせを基本とする複合的な症状であると言えるでしょう。
ガミースマイルの状態に、出っ歯や口ゴボなどが合わさると、歯ぐきが余計に目立ってしまうことになります。

ガミースマイルの治療法

ガミースマイルの治療法は、大きく二つあります。
まず一つは、歯科医学的なアプローチですね。 原因の一つである「上の前歯(または歯列全体)が本来よりも下方に位置している」状態を変えようという考え方です。
そしてもう一つは、美容外科的なアプローチです。 こちらは、「上口唇を含む周囲の表情筋が上方へ動き過ぎ(上がり過ぎ)ること」を抑制しようという考え方です。

ガミースマイルへの歯科医学的な治療法

矯正治療(ワイヤー矯正)

ガミースマイルの原因にも記したように、前歯の上下的な位置が本来(?)より下方にあることで歯茎が見えすぎてしまうわけです。
それならと、歯と周囲の歯ぐき(歯肉)を一緒に上方へ押し込めて(圧下)治す治療法です。
この治療を行うためには、アンカースクリューを併用した矯正治療(ワイヤー矯正)が必須となります。
アプローチに際しては、前歯の噛み合わせの状況により二通りの仕方があります。

前歯の噛みこみが深い場合(普通に噛んで下の前歯があまり見えない状態)は、上の前歯の辺りにアンカースクリューを2本植立して、前歯を中心に圧下して治していきます。
噛みこみが深ければ深いほど、ガミースマイルを治しやすくなります。

アンカースクリューを使用してガミースマイルを治す矯正治療
前歯の辺りのアンカースクリューを用いて、前歯を圧下していきます

前歯の噛みこみが浅い場合(下の前歯がしっかり見える状態)は、上の前歯や奥歯の辺り、口蓋などに複数(4~6本)のアンカースクリューを植立して、上の歯列の内側にもパラタルバーなどの装置を併用して、上の歯列全体(前歯も奥歯も!)を圧下して治していきます。
どのくらい前歯の歯ぐきが見えなくなるか!?は、奥歯がどのくらい圧下させられるか!?にかかっています。
前歯を圧下するのは比較的簡単なのですが、奥歯は大きく根の形態が複雑なので、圧下に限界が生じることがあるのです。

アンカースクリューを使用してガミースマイルを治す矯正治療
歯列の内外にある複数のアンカースクリューを用いて、歯列全体を圧下していきます
アンカースクリューを使用してガミースマイルを治す矯正治療
歯列の内外にある複数のアンカースクリューを用いて、歯列全体を圧下していきます

歯肉切除(歯ぐきを切る)

歯茎を切って前歯をセラミックなどで被せて、審美歯科的に治そうとするアプローチです。
ただ、この方法は全くお勧めできません。

考えてもみてください、歯ぐきを切ったら歯の形がおかしくならないようにちょっと長めの前歯をセラミックで作ります。 改善されたと感じるくらい歯茎を切ったら、どれだけ長い歯になります? 正直、ものすごく長い前歯になるはずです。
たとえガミースマイルが改善されても、笑った時の口元の見え方はとても不自然でおかしな状態になるはずです。

もちろん、1mmでも2mmでも良いから歯茎を切りたいと希望する方もおられます。 でも、それがそんなに簡単なことではない理由があります。
それが、体の恒常性(ホメオスタシス) という、 外部の環境が変化しても体内の環境を一定に保とうとする仕組み のことです。
歯ぐき(歯肉)には生物学的幅径(バイオロジカル ウィズス)という歯ぐきが炎症により周囲組織を破壊せず安定を保つため、歯の周りにはコレだけの歯肉の幅が必要であるというものがあります。

上皮付着0.97mmと結合組織付着1.07mmを合わせた2.04mmを生物学的幅径という。体の恒常性を保つ大事なことです。
上皮付着0.97mmと結合組織性付着1.07mmを合わせた2.04mmの生物学的幅径が、歯や歯肉の周りの環境を一定に保つ恒常性です。

歯ぐきを切るとしたら、歯肉溝を構成する遊離歯肉といわれる部分になります。 上記の図では0.69mmとしていますが、実際に健康な方のお口で前歯の部分で計測するとだいたい1~2mmです。 仮に2mmとして、切れても1mmでしょうか。 それを超えて切っても、必ず歯ぐきは元の状態に戻ります。

また、歯と歯ぐきの境目の波状に見える歯肉のラインも、遺伝的に持って生まれた形があります。
凹部の深いスキャロップ型と凹部の浅いフラット型です。

スキャロップ型の歯肉の形
スキャロップ型
フラット型の歯肉の形
フラット型

前歯を長くするために歯ぐきを切ってその形を崩しても、やはり元に戻ります。
一度、その施術をした歯を見たことがありますが、歯ぐきを無理やり切った後に戻らないために、歯ぐきを抑え込むようなボテッとした清掃性の悪いセラミックが被されていました。もちろん歯茎は腫れてました。

どうしても歯ぐきを切ってという方法をとるならば、歯茎の下で歯を支えている歯槽骨をも削合しなければいけません。 歯冠延長手術という外来で可能な小手術になります。

外科矯正

自由にやって良いのならば、一番確実に思うがままに治せるのではと思います。 ただし、大きな問題が立ち塞がります。 それは、ガミースマイルは医学的な病気ではない、という壁です。
外科矯正というのは、例えば、受け口や開口、顔の歪みなどで、抜歯して矯正しても普通の噛み合わせにすることが出来ない時などに、顎の骨を切って根本から治してしまおう!という考えのもと保険適応にて施術されています。 「歯のレベルの矯正治療だけでは良い歯並びと良い噛み合わせを達成することが出来ない症例に対して、外科手術を併用することで骨格レベルから治してしまおう」のが本来の目的なのです。

ガミースマイルへの美容外科的な治療法

ボトックス注射

上口唇を動かして引き上げる表情筋にボトックス注射を行い、動きを麻痺させることにより上口唇が上に上がり過ぎないようにしようという治療法です。
欠点としては、半年もすれば効果が無くなることでしょうか。
しかし、ガミースマイルが治ったらどうなるのか?を簡単に知ることができるので、治すかどうか悩んでいる人が、治った状態を一度イメージするには良い方法だと思います。

口腔前庭縮小術

上口唇の内側で口唇の粘膜と歯ぐき(歯肉)を縫い合わせてしまい、上口唇が上に上がらないようにする治療法です。
欠点としては、必ずしも上手くいくとは限らないということでしょう。

ガミースマイルを治すために美容外科にて口腔前庭縮小術をした後の傷跡と縫い目。
口腔前庭縮小術における傷跡の縫い目
ガミースマイルを治すために美容外科にて口腔前庭縮小術をしたけれども、治っていなくて、相変わらず笑うと歯ぐきが大きく見えてしまう状態の笑顔。
口腔前庭縮小術をしたけれども上手くいかず、いまだにガミースマイルの状態で、上口唇の際のところに手術に伴う縫い目が見えます

上手くいったように見えても、約3か月ほどで治療効果が薄れて再発するという方を何人も見ています。
この手術法の一番嫌な欠点は、上手くいかなかったときに再発するだけでなく、笑った時に上口唇がめくれて縫い目までもろに見えてしまうことがある、ということです。 こうなると処置前よりも悪い見た目になってしまいます。
ちなみに費用は約40万円ぐらいのようです。

ガミースマイルの矯正治療例

アンカースクリューを使用してガミースマイルを治した代表的な治療例をお見せしましょう。

ガミースマイル:口ゴボを伴う前歯の噛みこみが深い症例

ガミースマイルで口元が出ているのを矯正治療する前の笑うと歯茎が見える口元と横顔
ガミースマイルで口ごぼの矯正治療前の歯並び

前歯の噛みこみが深いガミースマイルの矯正治療の詳細は、コチラを参照してください。

ガミースマイル:口ゴボを伴う前歯の噛みこみが浅い症例

ガミースマイルで口元が出ているのを矯正治療する前の笑うと歯茎が見える口元と横顔
ガミースマイルで口ごぼの矯正治療前の歯並び

前歯の噛みこみが浅いガミースマイルの矯正治療の詳細は、コチラを参照してください。

ガミースマイル:非抜歯で対応した症例

ガミースマイルの人の矯正前の口元と横顔
ガミースマイルの人の矯正前の歯並び

非抜歯で対応したガミースマイルの矯正治療の詳細は、コチラを参照してください。

ガミースマイル:八重歯と出っ歯を伴う症例

ガタガタのある出っ歯の歯並びの矯正前の口元で、笑うとガミースマイルもあります
ガタガタのある出っ歯の歯並びの矯正前

→ 八重歯と出っ歯を伴うガミースマイルの矯正治療の詳細は、コチラを参照してください。

ガミースマイル:口ゴボを伴う症例

ガミースマイルで口元が出ているのを矯正治療する前の笑うと歯茎が見える口元と横顔
ガミースマイルで口元が出ているのを矯正治療する前の笑うと歯茎が見える口元と横顔

→ ガミースマイルを伴う口ゴボの矯正治療の詳細は、コチラを参照してください。

ガミースマイル:口ゴボを伴う症例

ガミースマイルを伴うごぼ口の人の矯正前の歯ぐきが大きく見える笑顔
ガミースマイルを伴うごぼ口の人の矯正前の横顔と口元

→ ゴボ口を伴うガミースマイルの矯正治療の詳細は、コチラを参照してください。

ガミースマイルのQ&A

出ている上の前歯を引っ込めたら、ガミースマイルを治せますか? 

前歯が奥へ引っ込むことで、お口は閉じ易くなります。 しかし、ガミースマイルの原因たる上口唇の上への上がり具合も、上の前歯が下方に位置していることも変わりません。 でも口唇の緊張具合は減少して口元をカバーし易い状況になっているので、多少とも歯ぐきの見え具合が減少している可能性はあると思います。
積極的に改善を図ったわけではないので、ちょっとでも見えずらくなれば儲けものという心持ちであれば、「あり」だと思います。

マウスピース矯正でガミースマイルを治せますか?

マウスピースにハイプルヘッドギアとかハイプルJ‐フックなどの顎外固定装置を組み込んで歯列を上方へ圧下させることが出来れば、ある程度治せるかもしれません。(経験したことが無いので、断言はできませんが、、、)
帽子みたいなモノを被って矯正している子供さんを見たことはありませんか? あれが顎外固定装置あれが顎外固定装置です。

矯正で用いる顎外整形力 ヘッドギア

しかし、同じことを大人が出来るか!?と尋ねられれば、そういう装置を1日20時間以上装着して、日常生活を毎日送るのは大変に難しい、いや、現実的に無理だろうと思います。

前歯を圧下させると、前歯が押し込まれて歯茎にめり込んだりしませんか?

ガミースマイルを矯正で治すにあたっては、前歯や奥歯を押し込む「圧下」という歯の動きが欠かせません。カウンセリング(相談)や治療の途中で、「歯を押し込んで治すのですよ」という説明をすると、「歯だけが歯ぐきの中にめり込んでいく・・・」という状態を想像される方が多いようです。
実際には下の2枚の写真で示すように、「歯と歯茎が一体となって変化します」というのが正解です。
【圧下前】
圧下の時の歯と歯茎の変化(治療前)

【圧下後】
圧下の時の歯と歯茎の変化(治療後)

見て欲しいのは、「薄緑色の丸で囲んだアンカースクリュー」と「青い線で記した前歯の歯茎のライン」、この二つです。 お見せしている写真でこの二つの間の距離を較べてみると、明らかに治療前(圧下前)よりも治療後(圧下後)の方がその距離が短くなっていることが分かると思います。
アンカースクリューは矯正力を加えても動かないので、その位置は変わりません。 この2枚の写真で分かる歯茎の幅の変化は、前歯が圧下されたことで変化したものです。 「歯」だけがめり込んで短くなっていくのではなく、「歯と歯ぐき」が一体となって上方へ押し込まれて行くのです。
実は、このことは私が九大の矯正科に在籍していた時、同じ研究室の指導教官の先生方が提出した論文の内容なのです。 矯正を行う上で何となく感じていたことを、組織学的な研究で明確な事実として証明した、とても素晴らしい研究であると思います。
ただし、なんにでも限界というモノがあります。 限界を超すと、やはりめり込んでいくようです。 その結果、歯の長さが短くなってくることがあります。

ガミースマイルのせいか上の前歯が下唇に食い込んでいることが気になります、良くなりますか?

もちろん、良くなります。
その結果として、最初は上の前歯が下唇に食い込んでいる場合でも、治療後は下唇に接するぐらいになります。
下に示すレントゲン写真において、黄色い線でマークしたものが上の前歯で、赤い線でマークしたものが下唇です。 治療により、上の前歯と下唇の位置関係が変化していることが分かります。

ガミースマイルを矯正する前の上の前歯と下唇との位置関係
治療前:上の前歯(黄色い線)が下唇(赤い線)に食い込んでいることが分かります
ガミースマイルを矯正した後の上の前歯と下唇との位置関係
治療後:上の前歯(黄色い線)は下唇(赤い線)に接するくらいの状態に変化していることが分かります

歯ぐきを見せずに笑う方法はありますか?

難しいですけど、練習によりある程度は出来ると思います。
鏡を見ながら、出来るだけ自然に見えるよう笑いながらも歯茎が見えない笑い方を確認して、毎日地道に練習してください。 何気に大笑いしたら見えてしまうかもしれないけれど、普段の会話で見せる笑顔(作りこんだ笑顔)では見せないように笑うことが出来るようになると思います。
モデルをしている患者さんに聞いたことがあるのですが、70%のスマイル、100%のスマイル、120%のスマイルと、笑顔の作り方を日々練習しているそうです。 プロでも練習が必要なんです。