ガミースマイルの原因と治し方(矯正)

このページの内容について概略を示します。
1.ガミースマイルって何?
    ガミースマイルの概要
    ガミースマイルの原因
2.ガミースマイルの治療法
    美容外科領域からのアプローチ
      (ボトックス注射、口腔前庭縮小術)
    歯科医学的アプローチ
      (矯正治療、歯肉切除、外科矯正)
    ガミースマイルの治療例
3.ガミースマイルのQ&A

ガミースマイルって何?

それは、笑った時に前歯と一緒に歯茎(歯肉)が大きく見えてしまっている状態のことです。

笑うと歯茎がガッツリ見えるガミースマイル
笑うと歯茎がガッツリ見えるガミースマイル

ガミースマイルの概要

一般的に、笑った時に見える歯茎の幅が3mm以上の場合を、ガミースマイルと呼んでいます。
決して病気ではないのですが、出っ歯などを伴っていることが多いので、笑うと、前歯と歯茎が一緒になってドーンと前に突き出したような感じに見えてしまい、口元や歯の存在感がとても大きくなってしまうことが多いようです。
そのため人によっては、「笑った時に前歯と歯茎が一緒に見える」状態をとても気にしてしまう方もおられます。 その場合が治療対象になると考えます。
また、ガミースマイルの歯茎の見え具合は、10年で1mm見えなくなるという研究もあるようです。

ガミースマイルの有名人

女優さんで言えば、沢口靖子さん、戸田恵梨香さん、新垣結衣さん、柴田理恵さん、久本雅美さん、などなど。
スポーツ選手で言えば、錦織圭さん、安藤美姫さん、上原浩治さん、 などなど。
結構多くの人がいます。

ガミースマイルの原因

ガミースマイルの原因は二つあると考えています。
一つは、上口唇を含む周囲の表情筋が上方へ動き過ぎ(上がり過ぎ)ること。
もう一つは、上の前歯が下方に位置していること。
この二つの組み合わせを基本とする複合的な症状であると言えるでしょう。
ガミースマイルの状態に、出っ歯や口ゴボなどが合わさると、歯茎が余計に目立ってしまうことになります。

ガミースマイルの治療法

大きく二つの治療法があります。
まず一つは、美容外科領域からのアプローチです。 そしてもう一つは、歯科医学的なアプローチですね。

美容外科領域からのアプローチ

ボトックス注射

上口唇を動かして引き上げる表情筋にボトックス注射を行い、動きを麻痺させることにより上口唇が上に上がり過ぎないようにしようという治療法です。
欠点としては、半年もすれば効果が無くなることでしょうか。
しかし、ガミースマイルが治ったらどうなるのか?を簡単に知ることができるので、治すかどうか悩んでいる人が、治った状態を一度イメージするには良い方法だと思います。

口腔前庭縮小術

上口唇の内側で口唇の粘膜と歯茎(歯肉)を縫い合わせてしまい、上口唇が上に上がらないようにする治療法です。 欠点としては、必ずしも上手くいくとは限らないということでしょう。

ガミースマイルを治すために美容外科にて口腔前庭縮小術をした後の傷口と縫い目。
口腔前庭縮小術における傷跡の縫い目
ガミースマイルを治すために美容外科にて口腔前庭縮小術をしたけれども、治っていなくて、相変わらず笑うと歯茎を大きく見えてしまう状態の笑顔。
口腔前庭縮小術をしたけれども上手くいかず、いまだにガミースマイルの状態で、上口唇の際のところに手術に伴う縫い目が見えます

上手くいったように見えても、約3か月ほどで治療効果が薄れて再発するという方を何人も見ています。 この手術法の一番嫌な欠点は、上手くいかなかったときに再発するだけでなく、笑った時に上口唇がめくれて縫い目までもろに見えてしまうことがある、ということです。 こうなると処置前よりも悪い見た目になってしまいます。
ちなみに費用は約40万円ぐらいのようです。

歯科医学的なアプローチ

矯正治療

ガミースマイルの原因にも記したように、前歯の上下的な位置が本来(?)より下方にあることで歯茎が見えすぎてしまうわけですから、前歯を周囲の歯茎(歯肉)と一緒に上方へ押し込めること(圧下)が出来れば、治すことが出来るわけです。 この治療を行うためには、アンカースクリューを併用した矯正治療が必須となります。
アプローチに際しては、前歯の噛み合わせの状況により二通りの仕方があります。

前歯の噛みこみが深い場合(普通に噛んで下の前歯があまり見えない状態)は、上の前歯の辺りにアンカースクリューを2本植立して、前歯を中心に圧下して治していきます。 噛みこみが深ければ深いほど、治しやすくなります。

アンカースクリューを使用してガミースマイルを治す矯正治療

前歯の噛みこみが浅い場合(下の前歯がしっかり見える状態)は、上の前歯や奥歯の辺りに複数(4~6本)のアンカースクリューを植立して、歯列の内側にもパラタルバーなどの装置を併用して、上の歯列全体(前歯も奥歯も!)を圧下して治していきます。 どのくらい治るかは、奥歯がどのくらい圧下させられるか!?にかかっています。

アンカースクリューを使用してガミースマイルを治す矯正治療
アンカースクリューを使用してガミースマイルを治す矯正治療

歯肉切除(歯茎を切る)

歯茎を切って前歯をセラミックなどで被せて、審美歯科的に治そうとするアプローチです。
ただこの方法は全くお勧めできません。
考えてもみてください、歯茎を切ったら歯の形がおかしくならないようにちょっと長めの前歯をセラミックで作ります。 改善されたと感じるくらい歯茎を切ったら、どれだけ長い歯になります? 正直、ものすごく長い前歯になるはずです。 たとえガミースマイルが改善されても、笑った時の口元の見え方はとても不自然でおかしな状態になるはずです。
もちろん、1mmでも2mmでも良いから歯茎を切りたいと希望する方もおられます。 でも、それがそんなに簡単なことではない理由があります。 それが、体の恒常性(ホメオスタシス) という、 外部の環境が変化しても体内の環境を一定に保とうとする仕組み のことです。
歯茎(歯肉)には生物学的幅径(バイオロジカル ウィズス)という歯茎が炎症により周囲組織を破壊せず安定を保つため、歯の周りにはコレだけの歯肉の幅が必要であるというものがあります。

上皮付着0.97mmと結合組織付着1.07mmを合わせた2.04mmを生物学的幅径という。体の恒常性を保つ大事なことです。
上皮付着0.97mmと結合組織性付着1.07mmを合わせた2.04mmの生物学的幅径が、歯や歯肉の周りの環境を一定に保つ恒常性です。

歯茎を切るとしたら、歯肉溝を構成する遊離歯肉といわれる部分になります。 上記の図では0.69mmとしていますが、実際に健康な方のお口で前歯の部分で計測するとだいたい1~2mmです。 仮に2mmとして、切れても1mmでしょうか。 それを超えて切っても、必ず歯茎は元の状態に戻ります。

また、歯と歯茎の境目の波状に見える歯肉のラインも、遺伝的に持って生まれた形があります。
凹部の深いスキャロップ型と凹部の浅いフラット型です。

スキャロップ型の歯肉のライン
スキャロップ型
フラット型の歯肉のライン
フラット型

前歯を長くするために歯茎を切ってその形を崩しても、やはり元に戻ります。
一度、その施術をした歯を見たことがありますが、歯茎を無理やり切った後に戻らないために、歯茎を抑え込むようなボテッとした清掃性の悪いセラミックが被されていました。もちろん歯茎は腫れてました。

どうしても歯茎を切ってという方法をとるならば、歯茎の下で歯を支えている歯槽骨をも削除しなければいけません。 歯冠延長手術という外来で可能な小手術になります。

外科矯正

自由にやって良いのならば、一番確実に思うがままに治せるのではと思います。 ただし、大きな問題が立ち塞がります。 それは、ガミースマイルは医学的な病気ではない、という壁です。
外科矯正というのは、例えば、受け口や開口、顔の歪みなどで、抜歯して矯正しても普通の噛み合わせにすることが出来ない時などに、顎の骨を切って根本から治してしまおう!という考えのもと保険適応にて施術されています。 「歯のレベルの矯正治療だけでは良い歯並びと良い噛み合わせを達成することが出来ない症例に対して、外科手術を併用することで骨格レベルから治してしまおう」のが本来の目的なのです。

ガミースマイルの治療例 ( before & after )

アンカースクリューを使用して治した矯正治療の症例です。

噛みこみの深いガミースマイルの症例

ガミースマイルで口元が出ているのを矯正治療する前の笑うと歯茎が見える口元と横顔
ガミースマイルで口ごぼの矯正治療前の歯並び

前歯の噛みこみが深いこのガミースマイルの治療の詳細は、コチラを参照してください。

噛みこみの浅いガミースマイルの症例

ガミースマイルで口元が出ているのを矯正治療する前の笑うと歯茎が見える口元と横顔
ガミースマイルで口ごぼの矯正治療前の歯並び

前歯の噛みこみが浅いガミースマイルの治療経過は、コチラを参照してください。

ガミースマイルのQ&A

Q&A 出ている上の前歯を引っ込めたら、ガミースマイルを治せますか? 

前歯が奥へ引っ込むことで、お口は閉じ易くなります。 しかし、ガミースマイルの原因たる上口唇の上への上がり具合も、上の前歯が下方に位置していることも変わりません。 でも口唇の緊張具合は減少して口元をカバーし易い状況になっているので、多少とも歯茎の見え具合が減少している可能性はあると思います。 積極的に改善を図ったわけではないので、ちょっとでも見えずらくなれば儲けものという心持ちであれば、「あり」だと思います。

Q&A マウスピース矯正でガミースマイルを治せますか?

マウスピースにハイプルヘッドギアとかハイプルJ‐フックなどの顎外固定装置を組み込んで歯列を上方へ圧下させることが出来れば、ある程度治せるかもしれません。
(帽子みたいなモノを被って矯正している子供さんを見たことはありませんか?)

矯正で用いる顎外整形力 ヘッドギア

しかし、同じことを大人が出来るか!?と尋ねられれば、そういう装置を1日20時間以上装着して、日常生活を毎日送るのは大変に難しい、いや、現実的に無理だろうと思います。

Q&A 前歯を圧下させると、前歯が押し込まれて歯茎にめり込んだりしませんか?

ガミースマイルを矯正で治すにあたっては、前歯や奥歯を押し込む「圧下」という歯の動きが欠かせません。カウンセリング(相談)や治療の途中で、「歯を押し込んで治すのですよ」という説明をすると、「歯だけが歯ぐきの中にめり込んでいく・・・」という状態を想像される方が多いようです。
実際には下の2枚の写真で示すように、「歯と歯茎が一体となって変化します」というのが正解です。
【圧下前】
圧下の時の歯と歯茎の変化(治療前)

【圧下後】
圧下の時の歯と歯茎の変化(治療後)

見て欲しいのは、「薄緑色の丸で囲んだアンカースクリュー」と「青い線で記した前歯の歯茎のライン」、この二つです。 お見せしている写真でこの二つの間の距離を較べてみると、明らかに治療前(圧下前)よりも治療後(圧下後)の方がその距離が短くなっていることが分かると思います。
アンカースクリューは矯正力を加えても動かないので、その位置は変わりません。 この2枚の写真で分かる歯茎の幅の変化は、前歯が圧下されたことで変化したものです。 「歯」だけがめり込んで短くなっていくのではなく、「歯と歯茎」が一体となって上方へ押し込まれて行くのです。
実は、このことは私が九大の矯正科に在籍していた時、同じ研究室の指導教官の先生が提出した論文の内容なのです。 矯正を行う上で何となく感じていたことを、組織学的な研究で明確な事実として証明した、とても素晴らしい研究であると思います。

Q&A 歯茎を見せずに笑う方法はありますか?

練習あるのみです。
鏡を見ながら、出来るだけ自然に笑いながらも歯茎が見えない笑い方を確認して、毎日地道に練習してください。 何気に大笑いしたら見えてしまうかもしれないけれど、普段の会話で見せる笑顔(作りこんだ笑顔)では見せないように笑うことが出来るようになると思います。
モデルをしている患者さんに聞いたことがあるのですが、70%のスマイル、100%のスマイル、120%のスマイルと、笑顔の作り方を日々練習しているそうです。 プロでも練習が必要なんです。